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5Actions

デジタルパフォーマンスを向上させるために取るべき5つのアクション

2025年3月23日
著者: Leo Vasiliou
翻訳: 逆井 晶子

この記事は米Catchpoint Systems社のブログ記事「5 Actions you can take to improve digital performance」の翻訳です。
Spelldataは、Catchpointの日本代理店です。
この記事は、Catchpoint Systemsの許可を得て、翻訳しています。


「遅い」は公式に「ダウン」と同義になりました。
これはSREレポート2025の主な発見の1つで、調査回答者の53%がこの表現に同意し、44%が「パフォーマンスはサービスレベル目標に対して追跡すべき」と述べました。

では、これからどうするべきでしょうか?

SREレポートでは、Webサイトのパフォーマンスと、迅速かつパーソナライズされたシームレスなデジタル体験の提供が求められていることが強調されています。
レポートではさらに、パフォーマンスの低下は完全なダウンやサービス停止と同等に深刻だと指摘されています。
そのうえで、IT部門は「ユーザの95%が5秒以内にチェックアウト可能」といった体験ベースの目標に沿って、パフォーマンスを測定すべきだと提言しています。

このことから私自身も考えさせられました。
こうした専門用語を使わずに、パフォーマンスの重要性を自分自身で簡単にチェックする方法はあるのでしょうか?
(こんなアドバイスを思い出してみてください:「結婚する前に、その人に遅いインターネットを使わせてみれば、その人の本性がわかる」)

そして、より重要で真剣な問題に移ります。
この新たなパラダイムに対応するために、組織は何をすべきでしょうか?

簡易チェック方法

まずは楽しみながら、自分がどれだけパフォーマンスを重視しているかを測るための簡単なチェックをいくつかご紹介します。

1. ご注文をどうぞ?
次にドライブスルーを利用する際、「ご注文をどうぞ?」と聞かれたら、すぐには返答せずに「いち、ミシシッピ…、に、ミシシッピ…」とゆっくり数えてみてください。
恐らく3〜4ミシシッピまでに、再び「ご注文をどうぞ?」と尋ねられるはずです。
ちなみに、アプリで事前注文をする場合は、すでに「遅いこと=ダウン」と認識しているとも言えます。
2. 砂時計は“秒時計”であるべき!
砂時計の図 次にオンラインで注文を行う際に、砂時計のアイコンや「このページを更新しないでください」「戻らないでください」といったメッセージが表示されたら、自分がどれくらいの時間待てるかを意識してみてください。
数秒でカーソルを動かし始めたり、スマホで通知を確認したくなるでしょう。
3. 早く方法を教えてくれ!
次に「やり方紹介の動画」を見始めたとき、自分がどのくらいの時間で「早く手順を教えて!」と思い始めるかに注目してみましょう。
おそらくそれほど時間はかからず、もっと短い動画を探し始めているはずです。

5つのアクション

少し準備運動ができたところで、本題に入りましょう。
Webサイトやアプリが速ければ速いほど、組織にとっては利益に直結します。
「高速」なサイトのポジティブな影響と「低速」なサイトのネガティブな影響(つまり、実際には高速 vs 低速なユーザ体験)に関するデータは豊富に存在します。

それを踏まえ、「遅い=ダウン」時代に対応するための5つのアクションを紹介します。

1. 認識を揃える!必ず揃える!
オフィスで議論する図

異なる階層の管理者間で、信頼性に対する認識を一致させることが重要です。
調査によれば、管理職のレベルによって信頼性に対する考え方には大きな隔たりがあることが判明しました。
ITチームとビジネスチームが「何が問題なのか」について共通の認識を持てなければ、Webパフォーマンス改善の優先順位を適切に設定することはできません。

この課題を解決するには、「想像されている業務」と「実際に行われている業務」との間にあるギャップを認識し、現状を明確かつ共通に理解することが不可欠です。
加えて、ITによるWebパフォーマンス改善の取り組みが、収益やその他の重要なKPIにどのように影響するかを把握することも重要です。

2. ユーザ体験に基づく目標(Experience-Level Objectives)でパフォーマンスを追跡する

体験レベル目標に基づいてパフォーマンスを追跡することは不可欠です。
多くのIT部門は、問題なしとされる内部のITメトリクスだけに注視する傾向がありますが、これは必ずしもユーザのデジタル体験が良好であることを意味しません。

カートの図

内部指標の監視と測定だけでは、良好なユーザ体験を保証することはできません。
そのため、「サイトでチェックアウトを完了したユーザ数」など、外側から内側に向けた体験ベースの指標を加え、それらを体験レベル目標に照らして追跡することが重要です。
また、これらの目標に対して順調に進んでいるのか、あるいは達成が難しい状況なのかを明確にするために、バーンダウンチャートを用いて進捗状況を可視化しましょう。

3. AIと分析で迅速に答えを導く

AIと分析を活用することで、より迅速に答えにたどり着くことができます。
体験レベル目標を追跡するだけでなく、AIや分析機能を使って単純な平均値の枠を超えてデータを捉えることが重要です。
単純な平均値は誤解を招く可能性があり、ユーザがどのような体験(例えば高速か低速か)をしているかの割合を示してくれません。

また、発生頻度の低い値(いわゆる「ロングテール」)を特定することも大切です。
それらは重要な収益源となる可能性があるためです。
高度な分析を活用すれば、パフォーマンスデータの分布全体を可視化でき、「どの市場が最も収益に貢献しているか」など、重要なビジネス指標ごとにデータを分類することが可能になります。
さらに、データセット内のトレンドの変化や相関関係をAIで検出することも効果的です。

4. すべてのスタック構成要素にパフォーマンスの視点を適用する

アプリケーションのパフォーマンスを、そのホスティング先であるクラウドなど、ソース側だけで測定していても、ユーザ体験に影響を与えている要因を把握することはできません。
そのため、ユーザとWebサイトまたはアプリケーションをつなぐあらゆるスタック構成要素に対して、パフォーマンスの観点からの評価が求められます。
体験レベル目標が重要である以上、その体験に影響を与えている要素を可視化することは、パフォーマンスの問題を発見・対応するうえで大きな助けとなります(例:最新のアップデート後にパフォーマンスが低下していないか?)。

したがって、ソース側のパフォーマンス測定に加えて、実際にユーザが体験している場所でのパフォーマンスも測定することにより、より包括的な理解が得られます。

5. パフォーマンスの継続的な改善と最適化を維持する

最後に、継続的なパフォーマンス改善と最適化を推進する文化を築くことが重要です。
パフォーマンスの向上は一度限りの取り組みではなく、フロントエンドとバックエンドの両面で継続的な作業が求められます。

お客様の期待は日々高まっており、それに比例して「より速い体験」への要求も加速しています。

こうした期待に応えるためには、4つのCを意識することが重要です。
コミュニケーション(Communication)とコラボレーション(Collaboration)の文化(Culture)を築き、それを持続的なパフォーマンス意識によって促進する(catalyzed)ことが重要です。
このような文化を持つことで、組織全体が常に最適なパフォーマンスの提供に集中できるようになります。

この研究の詳細については、The SRE Report 2025をダウンロードするか、オンラインで読むことができます(登録不要)。